大学受験に偏重した高校教育に限界


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教育問題 大学受験に偏重した高校教育に限界

配信元:私塾界 10月31日08時34分

埼玉県内の有数の進学校、県立浦和高校(さいたま市)では、イギリスの私立の名門校のパブリックスクールと交換留学協定を結んでいる。過去6人の生徒が渡英し、全員がケンブリッジ大学などのイギリスの有力大学に進んだ。ただ、この国際化にも現状の大学入試制度が障害となっている。日本の高校の授業は日本の大学にしか通用しない入試対策が中心だ。生徒同士の議論などが少なく、海外の高校生には物足りなさも感じており、イギリスからの生徒の来日は2008年度が最後となっており、受け入れ態勢に課題が残る。

愛知県蒲郡市の私立海陽学園は、全寮制の中高一貫校だ。かつての旧制高校のように年齢の異なる生徒が共同生活することでリーダーの資質を養う。ただ、ハウスと呼ばれる全12棟の寮のうち、2棟だけはこの理念の例外だ。通称「受験生ハウス」と呼ばれ、大学入試を控えた高3生がここで生活している。全寮制の理念に沿えば、高3は寮行事の企画運営などを通じリーダーシップに最後の磨きをかける学年。しかし、現在の入試を前提にすると受験勉強に専念させざるを得ないのだという。

「大学全入時代」を迎え、入試のハードルが低くなったが、難関大の入試に限っては昔ながらの受験戦争が続く。時代が求める能力と現行の大学入試制度で測られる能力とのズレが生じ、多くの生徒が難関大に進むという高校からの現行入試制度への疑問の声が後を絶たない。

現在、大学選びで重視されるのは地元、国公立、理系、医学部。中でも地元大学志向は顕著だ。文科省の調査によると、大学入学者に占める地元高校出身者の割合は今春42.0%で過去10年間に2.7ポイント上昇。東大も含めて「全国区」の大学は消えつつあるのが現状だ。

これは、いまの高校生たちがあきらめが早く浪人を避ける安全志向が広まっていることや、地元国公立大の合格者数という目先の目標にとらわれ、大学選択の幅を狭める高校の進路指導の姿勢も否定できない。いわゆる「動かぬ高校生」の増加が、高校と大学間に横たわる問題でもある。

また、大学受験に偏重する傾向に促す事例として、東京都が打ち出す進学指導の重点校に指定した都立高校の評価基準だ。評価の物差しは東大、京都大など偏差値が高い国立の4校と国公立医学部の現役合格者数。この中に、27言語の教育体制などを土台に国際人育成に力を入れる外語大は含まれず、「難関大への進学自体が目的になってしまう」との声もある。いずれにしても、大学入試に依存した高校教育は様々な限界が見え始めているのではないだろうか。

私塾界

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