試合の前に「相手チームに勝ったことはないけど、大丈夫かなぁ?」「あなたの失敗で負けたりしないでね」「負けないように、がんばって」などと、応援しているつもりでも、ついつい「負けない」などといったネガティブな発言をしてしまっていませんか?
前向きに試合に向かうためには、ポジティブな思いで「勝つぞ」「やるぞ」という気持ちにさせることが大切です。不安を自信に変えてしまう、そんなステキな会話術をご紹介します!
■声かけ次第で子どもはやる気になれる
「ペップトーク」をご存知ですか? ペップトークとは、スポーツの試合前などに、監督やコーチが選手やスタッフに熱意と決意を植え付けようと発する、短くわかりやすい激励のメッセージのこと。試合前に選手が感じている「勝てるかな…?」などの不安・ネガティブなイメージを「より良い言葉」によって取り除き、勝つ=成功のイメージを与え“やる気の導火線に着火”してあげることで、選手は自信を持って試合に臨むことができるようになります。
例えばサッカーの公式戦。次の対戦は、地域でも評判の強豪チームが相手になったとします。自分たちのチームは今までそのチームに勝ったことがありません。
対戦する前に「相手チームはすごく強いから、負けても仕方がない。なるべく点差をつけられないようにがんばろう」と話しかけるのと、「強豪チームと試合ができるなんてラッキーなことだ。自分たちの持てる力をすべて出して立ち向かおう」と声をかけるのとでは、子どもの気持ちも変わってきます。
前者では「どうせ負けちゃうんだろうな…」と弱気になってしまいますが、後者なら「実力を発揮できるいいチャンスだ」と前向きになれるはずです。
■言葉のテクニックだけではダメ!状況把握が重要
声かけをする際に大切なのは、相手(子ども)の置かれている状況を把握して(上記の場合:相手は強豪チーム)、ネガティブな要素や課題(上記の場合:今まで勝ったことがない)を受け入れた上で、やればできるんだ!というポジティブな思考(上記の場合:実力を発揮できるいいチャンス)に考え方を変えてあげること。人はポジティブな言葉で背中を押されると、自然と「やるぞ!」という気持ちになり、やる気と行動のスイッチを入れることができるのです。
さらに「今日はどんどんシュートを打って行こう」などと、試合の中で行う具体的な行動を伝えると選手全員が「シュートを打って点を取るんだ」という共通の目標を持つことができ、自主的な行動(=どんどんシュートを打つ)を起こせるようになります。
■日々のコミュニケーションが効果的な声かけの土台
ペップトークは「ここぞ!」という場面での声かけが威力や効果を発揮するために欠かせないのは、日々の子どもとのコミュニケーションです。
毎日子どもと十分に会話ができていれば、子どもの置かれている立場や気持ちを正しく認識することができます。しかし、忙しくてあまり会話ができない、子どもの練習や試合を見たことがないといった状況では適切な声かけができず、ペップトークの効果は現れません。
小学校高学年ぐらいになると、なかなか親と話しをしたがらないかもしれませんが、「今日のサッカーどうだった?」などと声かけをして話しをする時間を作りましょう。もちろん、練習や試合もどんどん見に行くといいのではないでしょうか。
【事例】ペップトークにチャレンジしてみよう!
・6年生最後の試合。公式戦の決勝戦
・チームの指導方針は、常にサッカーを楽しむこと。
・子ども達はいつも以上に緊張しているのか、ウォーミングアップの最中も顔の表情はかたく、声も出ていない。プレーもいつもより縮こまっている感じ。
もし、あなたがこのチームの監督なら
試合前のミーティングでどんな言葉を子ども達にかけますか?
例)
どうした?みんな、表情も動きもかたいなぁ。でも大丈夫だ。
それだけお前たちがこの試合にかけている気持ちの現れだな。
今日まで一生懸命練習してきたその成果を出すんだっていう気持ちが顔に出ている。
あとは、お前らが笑顔で楽しんでいつものようにプレーできればバッチリだ。
思いっきり楽しんで6年間で一番楽しかった試合にしようぜ。
さぁ、整列だ。
とにかく自分たちのサッカーを楽しみながら、思いっきりチャレンジしてこい。
それが俺たちのスタイルだ。結果は必ず付いてくる!
上記はあくまで例ですが、ポイントは、「負けたら最後だ!」とか、「相手は強いぞ」とか、「何を緊張してんだ!?」とかネガティブな言葉を発しないことです。モチベーションを高めるためには、ネガティブな要素を排除して、やる気に火をつけるような言葉を選んでください。また、「リラックスしろ」とだけ言ってもなかなか子どもの耳には届きません。彼らの置かれている状況を把握した上で、ポジティブな言葉で送り出すことが重要です。
不安を自信に変え、やる気を引き出すスピーチは、あのオバマ大統領が演説で、フランスW杯で優勝した当時のフランス代表監督がW杯決勝戦でも使ったと言われています。その効果的な声かけやスピーチには、一定の法則があります。法則に従って声かけすれば、子どものやる気を促すことができます。サッカーだけでなく、子どもの勉強や、お父さんのビジネストークにも使えるので、ぜひ法則を学んで、実践してみてください!
■とにかくポジティブシンキング!
日ごろからネガティブなことを言わないように心がけていると、さまざまな状況に直面した時に自然とポジティブに物事をとらえることができるようになります。
ネガティブなイメージを払拭し、ポジティブなイメージを持つことを、選手、親、コーチ、全員が習慣として身につけることをおススメします。
【ペップトーク(効果的な声かけ)の法則】
(1)不安を自信に変換
言葉を使ってネガティブ→ポジティブに発想を転換する。
たとえ話などを用いて、不安や自信のなさは「勘違い」や「思いこみ」だと気付かせる。
(2)自信を意欲に転換
やればできるんだということに気付かせる。
練習を十分行ったなど、試合前の準備は整っていることに気付かせる。
行動を起こせば目標を達成できることに気付かせる。
(3)意欲に成功の確信を与える
今何をすべきか、成功のコツやツボを教える
(今日の試合は守備を重視してカウンターを狙う、どんどん攻撃を仕掛けていこうなど)。
キーワードを使い、行動を起こさせる。
(4)確信を持って行動を起こさせる
やる気になるメッセージや言葉を伝える。
全員がやる気になる決め台詞を言う。
【ペップトーク作成の手順】
(1)状況認識。相手の不安(ネガティブな要素)を察知する。
▼
(2)原因究明。不安の原因が何にあるかを知る
▼
(3)解決策を提示。どうすれば不安の原因を取り除くことができるか考える
■選手全員が共通理解できるキーワード
試合結果が「引き分け」となった時、引き分けを「負けなくて良かった」と考えることも「勝てなかった」と考えることもできます。同じひとつの言葉や状況でも、捉え方は人それぞれ。その人の価値観や道徳観、思考では制御できない生理的な反応、気分や体調によっても、言葉の捉え方は変わってしまいます。
どんな状況でも「話す側」と「聞く側」が同じ理解ができる言葉=キーワードを設定しましょう。キーワードが浸透すると、その言葉を聞いただけで、モチベーションがアップするようになります。試合前だけでなく、日々の練習中からキーワードを頻繁に使うことで、自然と選手たちにキーワードが浸透していくのです。
なでしこジャパンの選手たちは、女子ワールドカップの予選の時から「金メダル」を合言葉(キーワード)にしていたというのは、有名な話です。
どの国にも負けないくらい練習した、絶対にあきらめない気持ちで臨もう、そういう思いを「金メダル」という言葉に込めてモチベーションを上げ、本当に優勝しました。
キーワードは短く、みんなが同じ認識を持てればどんな言葉でもOKです。各家庭、各チームでキーワードを決めてみてはいかがでしょうか?もちろん、キーワードが効果的に作用するためには、日ごろの親子間、選手間、チーム間のコミュニケーションがベースになります。ぜひ子どもの置かれている状況を把握して、子どもがやる気になり自信を持てるようなペップトークにチャレンジしてみてください。次の試合で効果が表れることを祈ります!
※ペップトークについてもっと知りたい方はWACアカデミーまでお問い合わせください。
●WACアカデミーとは・・・
様々なチームや団体・企業向けに、前向きに積極的に取り組む姿勢を育てる「ポジティブ・シンキング」・「ロジカル・シンキング」両面をバランス良く鍛え、組織やチームの人間関係・信頼関係を築くためのコミュニケーション・セミナーや講座を提供している。
【お問い合わせ先】
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記事提供:少年サッカーの保護者向け情報サイト[サカイク]

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