サッカーのレベルアップを目指す上で、欠かすことのできないのがイメージトレーニングです。今回も「子どものメンタル、親のメンタル」が好評連載中のメンタルトレーニング・コンサルタント大儀見浩介さんに、イメージトレーニングの方法を教えてもらいました。イメトレは場所を問わず、どこでもできるので、親子で楽しみながらやってみてください。
■チャレンジ01 目をつぶってイメージ!
技術をおぼえるときの最適なイメトレ
法横、上、正面などから自分の姿をイメージしてみよう!
さて今回は、新しい技術をおぼえるときのイメージトレーニングについて、お話ししたいと思います。新しい技術をおぼえるときは、自分ひとりの体の動きをイメージします。たとえば「右から来たグラウンダーのボールを右足のアウトサイドで止めて、すぐに右足で打つ」というプレーを習得したいとき。まず目をつぶって、プレーをイメージします。そのときに、自分の動きをスローモーション、コマ送り、早送り、巻き戻しなど、頭の中のリモコンで変えていってください。親御さんは「上から見たらどうなる?」「横から見たら?」など、視点を変えるようなアドバイスをしてあげるといいと思います。そうすることで、脳に様々な体の動きがインプットされます。頭の中でイメージすることができたら、実際に体を動かしてイメトレをしてみましょう。初めはゆっくり体を動かして、慣れてきたら実際のスピードでやってみてください。そうすることで、体の動きがスムーズになります。最終的には、特別に意識しないでできるようになるまで、繰り返し練習をします。
あこがれの選手のプレーを見ることもイメトレになる
イメージトレーニングは、目をつぶって頭の中でイメージを作る方法が一般的ですが、映像を見ることもイメージトレーニングの一種です。簡単にできるのが、あこがれの選手のプレーを映像で見て、そのとおりに体を動かすことです。その際、ただ動きを真似するのではなく、あこがれのメッシやC・ロナウドが「どんな意図をもって、そのプレーをしたのか」までを考えるとグッドです。「メッシは2人のDFの間が空いていたからドリブルをしたんだな」「C・ロナウドは、相手の態勢を見て、ドリブルのコースどりを変えているな」といったように、あこがれの選手のプレーの意図を考えて、「よし、今度これをやってみよう」と真似することができたら、イメトレの上級者です。小学校低学年の子どもなどは、選手の意図を理解し、言葉にするのは難しい場合もあります。そんなときは、親御さんが「メッシはどうして、こっちにドリブルをしていったのかな?」などと、質問をしてみてください。問いかけることによって、子どもに考えるきっかけを与えるのもひとつの方法です。
■チャレンジ02 気持ちを切り替える練習と理論
ミスしてもすぐ切り替えよう
脳に失敗のイメージを刷り込ませない
シュートを外したあとに、「やっちゃった......」と頭を抱える選手がいます。ワールドカップに出場するような世界トップレベルの選手でも、そのような仕草をする選手を見かけました。これは「失敗のイメージ」を心に植えつけてしまうため、おすすめできません。ミスを悔いている間もプレーは続いています。また、ミスのイメージで頭の中を一杯にすることで、体はミスへと自然に誘導されてしまいます。人間の体はイメージと密接な関係があります。ひとつ実験をしてみましょう。
<<実験>>
目をつぶってください。
それでは、猿のイメージをしないでください。お尻が赤くて、キーキー鳴く、猿のイメージはしないでください。
はい、目を開けてください。いま、頭の中は猿のイメージで一杯になっていると思います。
このように、「○○しないでください」と言っても、知らず知らずのうちに猿のイメージが植え付けられています。これと同じように「ミスをしないように、失敗しないように」と考えると、体が反応してミスをしてしまうのです。シュートを外したときも同じです。頭を抱えてネガティブなジェスチャーをすることで、脳に失敗のイメージが強くすりこまれていきます。そこで「次はシュートを外さないように、ミスをしないように」と考えると、頭の中がミスをするイメージで一杯になり、結果としてミスをします。普段は正確なクロスボールを蹴ることができるのに、一度ミスをしてしまうと、続けてミスしてしまう。このような選手は最初のミスのイメージが頭の中に強く残っていて、そのイメージをなぞるようにしてミスを繰り返すのです。
あらためて、姿勢を良くする意識も、気持ちの切り替えに必要なこと
ミスをした後は、すぐに気持ちを切り替えることが重要です。ミスから学び、次に活かすことも大切ですが、試合中はなかなか時間がとれませんよね。そんなときは、
・『姿勢』(胸を張り、顔を上げる。ヘッズアップ!)
・『深呼吸』(吐く息に意識を集中させる)
・『セルフトーク』(「切り替え!」「行ける!」「スペース」「右 or左」「ゴロ、ループ」など、ポジティブな言葉を発したり、具体的なイメージを作ります)
この3つを中心とした『パフォーマンス・ルーティーン』(これをすれば気持ちが切り替わり、成功イメージが湧いてくるという動作、手順のこと)を練習のときから積極的に取り入れ、自分で気持ちをコントロールしましょう。親御さんは、試合で自分の子どもがミスをしたときは「次の準備!」や「ナイスプレー!」など、ポジティブな言葉をかけてあげてください。そこで「なにやってんの!」などと、ネガティブな言葉をかけると、気持ちは落ち込み、ミスを引きずってしまうことにもなりかねません。とくに「シュートを打て!」や「蹴れ!」など、プレーに対する具体的な指示は避けましょう。親のメンタルは子どもに影響します。試合中に限らず、常にポジティブな行動や接し方をすることが、子どものメンタルを強くするひとつの方法なのです
大儀見浩介//
メンタルトレーニング・コンサルタント。東海大学体育学部にて応用スポーツ心理学を学び、サッカーだけでなく、新体操女子U18日本代表や教育、受験対策など、様々な分野でメンタルトレーニングを指導している。著書に「クリスチアーノ・ロナウドはなぜ5歩さがるのか~サッカー 世界一わかりやすいメンタルトレーニング」(朝日新聞出版)、「心理戦術が日本サッカーを進化させる」(白夜書房)がある。
公式HP『Mentalista』(PC版)
http://www.mentalista.jp
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